short
□ラプンツェル
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高い高い、塔のうえ。お姫さまは、空を見ていました。四角い空を見ていました。
「外の世界ってどんなところかしら?」
真っ白な、可愛らしい笑顔。窓から下を見下ろすと、とても綺麗な旅人が剣を持って歩いています。
「まぁ、素敵なひと」
お姫さまは、旅人に手をふってみました。いっぱいいっぱいふったけれど、旅人は気付かずに素通りしました。
「気付いてもらえなかったわ」
お姫さまは悲しくなって泣きました。しくしくしくしく泣きました。
「…誰か泣いているのかい?」
聞いたことのない、低くて優しい声。お姫さまが下を見てみると、そこには若くて素敵な王子様が立っていました。
「これは素敵なお嬢さん。どうして泣いているんだい?」
「わたし、さみしいの。さみしくて、さみしくて。外の世界を見てみたいわ」
そうしてまたしくしく泣いていると、王子さまはしばらく考えるように立っていましたが、
「では、ぼくがそっちにむかえにいくよ」
と言って、塔の壁を登り始めました。お姫さまはびっくりしましたが、うれしくなって、長い、長い自分のみつあみの髪を外にたらすと、
「どうぞお使いになって」
と言いました。王子さまは何だろう?と思いましたが、くれるものは使っておこうと思ってみつあみをつかみました。
王子さまは、可愛い声のお姫さまを思って登っていきました。お姫さまは、優しい声の素敵な王子さまを思って待っていました。
そして二人は、
「会えました」
「会えませんでした」
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